好きな人との仕事がひと段落したころ、
オレに新しいジョブが回ってきた。
とあるハードウェアにのせるソフトウェアの開発。
無謀なことに開発者はオレ一人だった。
オレがいる会社はベンチャーで、
ある一定の成功を収めている。
今回の仕事はその成功した事業の延長線上にあるものだ。
事業部としても、会社としても
重要性は非常に高いものだった。
それから半年の間、オレは睡眠時間3時間という状況で
仕事をしなければならなかった。
仕事上で頼れる人はいなかった。
今まで以上の勉強をする必要があった。
そのころ、オレにはもうひとつ頭を悩ませる問題があった。
オレの友人に鬱の女性がいた。
その友人からは仕事中であろうとなかろうと、
オレにメールが送られてきた。
毎日毎日悩みの相談メール。
励ましても励ましても
返されるのは全てを否定するメール。
鬱ってそういう症状を引き起こす。
だから怒ってはダメだった。
正論で返されると潰れてしまう。
どんなにおかしな内容でも
オレは受け止めて励まさなければならなかった。
オレが見捨てるわけにはいかないという妙な義務感があった。
オレは偽善者だったと思う。
正直言って、電話に出たくないし、話したくなかった。
土日くらいは何も考えたくない、
メールも見たくない、
誰にも会いたくない、
会話もしたくない、
そういう心理状態に追い込まれた。
必然的に友人に会う機会が減った。
片思いの人はオレの仕事量に気遣ってくれていた。
たまに朝早くオレが仕事をしていると
状況を聞いてくれた。
オレが仕事でイラついていると
飲みに誘ってくれた。
それはごくごく普通のこと。
誰でもすることだと思う。
でも、オレにはそれでよかった。
たったそれだけのことに随分と助けられた。
むしろ幸せだった。
オレが最後まで切れなかったのも
きっとその人のおかげだと思う。
たったそれだけのことで
オレはどんどん惹かれていってしまった。
それが思いを強くさせたんだと思う。
だんだんと付き合いたいという思いが強くなっていた。
自分が誤魔化せなかった。
その人には彼氏がいる。
その人は同僚である。
オレにとっては十分すぎるくらい、大きな障害だった。
そのころはまだ、
ただ好きでいれることに満足しよう。
そう自分に言い聞かせていた。
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